浜田光夫 研究室

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岡 ななみ
   

 僕の近況報告
 はじめての個人賞にハッスル!仕事こそ俳優の生命

1963年4月 近代映画 仲間たち 特集号より
   


      スタアのひとつの目標である受賞という望みがかなえられて浜やんは、グッと気を良くしてハッスル。テキトウにアルコールをたのしみつつ仕事への夢をはせます

  •  さすがにタフなぼくも…

  • なにしろ忙しい、忙しい。
    どのくらい忙しかったかって?なにしろ、およそ病気なんてしたことのないぼくが、過労で倒れてまる24時間、ベッドに釘付けにされてしまったのです。
    「おまえのことだから、きっとズル休みなんだろう」とは、いくらなんでもヒドイや。
    ま、順序を追って、ボツボツお話しすることにしましょう。

    『美しい十代』、『仲間たち』、『浅草の灯・踊子物語』――最近のぼくの仕事は、ざっとこんなところですが、なんとこの3本の撮影が同時にかぶさってきたのには、ちょっと弱りました。
    役柄からいえば、『美しい十代』がチンピラ、『仲間たち』がトラック運転手、『踊子物語』が画学生と、すこぶるバラエティーに富んでいて、すごくゴキゲンだったんですけどネ。
    だいたい、これまでのぼくは、あまり役の幅の広いほうじゃありませんでした。名作『キューポラのある街』の印象が強すぎたせいもあるんでしょうが、町工場に働く若者、“チョイぐれの、しかし根は純情のチンピラ”といったところが多かったのです。
    それはそれで、とても気に入ってるし、自分でもピッタリだと思うんですがね。
    まあ、ぼくもことし成人式をすませたことでもあるし、もう少し大人の役をやってみたいナ、と思うこともあったんです。
    ひきあいに出しちゃすまないけど、高橋英樹クンなんか、ずいぶんフケ役をやってますよネ。
    あれで、この2月10日にやっと満20歳になったというんだから、イヤになってしまう。精神年齢の点からいえば、ぼくのほうがずっと上だと思っているのに(怒るなョ、英樹!)ぼくときたら、いまだにティーンエイジャーあつかいなんだからなァ…。
    どうも、この童顔がワザワイしているらしい。
    余談はさておき、一度に3本の作品に、それもそれぞれ異なった性格の人物に扮して出演できるなんて、役者ミョウリにつきる話です。
    むろん、ハッスルしました。
    (しっかりしろ、浜田光夫クン、少々の疲れなんか気力でふっとばしてしまえ!)
    と、自分を励ましながら…。
    さいわい、『美しい十代』のほうが一足早くクランク・アップになって、ホッと一息ついたんですが、それからがたいへんでした。
    昼間、セットで斎藤組(『踊子物語』)を撮り終わると、その足で柳瀬組(『仲間たち』)のロケ現場へアタフタと駆けつけます。
    このロケ地がまた川崎市内で、しかもカンテツ(完全徹夜)ときているんだなあ…。
    というのも、仕方ないんですよ。なにしろ車の往来や人通りの激しい日中の市内では、とても落ち着いて撮影どころじゃありませんからね。
    早朝の、人々がまだすっかり眠りから醒めきれない時間にさっさとすませてしまおうというわけです。
    すっかり日が昇ったころ、トボトボと(はオーバーだけど!)わが家をさして帰る。
    さっそく寝床にもぐりこんで、夕方までグッスリ……テナぐあいにいかないところが、この商売の辛さなんです。
    スタジオではもうチャーンと斎藤組が、ぼくの出番を用意して、いまかいまかと待っている。
    「浜やん、だいじょうぶだろうな」
    なんてスタッフの人たちが気をもんでいる光景を思い浮かべると、おちおち安眠できませんよ。
    2、3時間、トロトロッとまどろんで、
    「行ってきまァーす」
    と家を飛び出すんです。サクサクと霜柱をふんで…なんていうと、ロマンチックだけど、冬の朝は車のエンジンのかかりが悪くって、これがまた一苦労です。

  •  エー お笑いを一席

  • 『仲間たち』は、みなさん、よくご存じでしょうから、『踊子物語』のことを少しおしゃべりしましょうか。
    小百合ちゃんの踊り子にあこがれる、オペラ気違いの画学生っていうのが、ぼくの役どころ。
    ニックネームは、ポカ長(いかにも、ぼくらしいや)。
    さて、このポカ長、しょっちゅう腹を空かしている貧乏書生だけど、よれよれのルパシカなんか着込んで、すこぶる颯爽としている。
    なにしろ、“芸術家”ですからネ。

    ところで、わが友人中の「芸術家」といえば、まず山内賢坊か、英樹あたりかな。
    二人ともヘタの横好きで、生意気に(?)油絵なんか描いているんです。
    こないだも、英樹の誕生パーティーに呼ばれて、いろいろ彼の“傑作”を見せつけられました。
    「なんだい、これは…。ふしぎな絵だな。どっちが上だか下だか、わかんないや」
    「チェッ、だから絵心のないやつとは、つきあいたくないんだ」
    なんてウソブキながら、しょうこりもなく次から次へ持ち出してきて、
    まあ人物画もいいけど、最近はもっぱらアブストラクトだよ。こいつはどうだい、“情熱”っていう題なんだけどね…」
    「なんだか汚らしい絵だな。“ハキ溜め”とかなんとかつけたほうがいいんじゃないか」
    憎まれ口はきいても、ま、彼の芸術に対する“情熱”だけは、認めなければならなくなるって寸法です。
    おどろいたことに、彼、最近洋酒のコレクションに凝りだして、棚の上にズラリと並べては、
    「この程度なら、どうやら銀座の二流バーなみかな」
    なんて悦に入っている。
    「下戸のおまえが、ヘンな道楽を始めたものだな」
    「なあに、ちょっとしたサービス精神のあらわれです。ま、先輩、一杯いきましょう」
    そこで、ぼくとしても、仕方なく(?)グラスを手に、
    「あんまり注ぐなよ。体こわすといけない」
    「神妙なこといいなさんな。飲めるんだろ、そうだろ、ハナが赤いや」
    浪花節の「森の石松。三十石船」のセリフもどきに、英樹のお酌で飲んでいるうちに、
    「ウーン、まわってきたぞ」
    ホロ酔い機嫌になってきます。
    こんどは、こっちがサービスをする番…。
    「おい、英樹、一席きかせてやろうか」
    「よせやい、ミソが腐るよ」
    「こいつ、ミソが腐るのは、おまえの歌のほうさ」
    というわけで、“エー、お笑いを一席”。(まったく、われながら長生きするな!)

    お笑いで思い出しましたが、先日、近映本誌の仕事で浅草に出かけたときのことです。
    ひと通り、グラビアの撮影がすんで、ぶらりとお訪ねしてみた浅草日活の支配人室。
    和服姿の先客が一人。どこかで見かけた人だなと思っていたら、落語家の橘屋圓蔵さんです。
    「ぼく、落語が大好きなんです。ときどき寄席のほうで、師匠のお話はうかがっています」
    「それはそれは…。しかし、お若いのに落語が好きとは、どうも恐れ入りました」
    すっかり師匠のおほめにあずかって、大いに面目をほどこしました。
    同じ芸術でも、どうもぼくは、落語のほうが性にあっているらしい。
    そのうち、「わが情熱」と題する新作落語でも発表して、英樹をアツといわせてやろうと思っているんですが、どうでしょう?

  •  ちょっとキザかな?

  • どうも話が脱線ばかりしていて、いけないな。
    少し、真面目な話題にきりかえましょう。
    ――こんど、サンケイのシルバースタア男優新人賞をいただきました。
    個人賞をいただいたのは、これが初めて…。
    子どものころから、どうも“賞”というやつに縁遠くて、一生(!)チャンスに恵まれないんじゃないかと観念していたら、思いがけなく…。
    それだけに、感激もひとしおでした。
    過去3年、無我夢中でやってきた仕事に、ひとつ区切りがついた感じ。
    さあ、これからは次の目標に向かって、大いにがんばるぞ!
    ――なんて書いちゃうと、まるで浜田クンが仕事の鬼になったみたいだけど、なに、それほどでもないんですよ。ぼくだって平凡な人間、おまけに遊びたい盛り(?)のとしごろですからネ。
    仕事を犠牲にしない範囲で、なんとか暇を作ってレジャーを楽しみたいと考えています。
    『踊子物語』と『仲間たち』がアップになって、一般に公開されるのが3月中旬ごろ。
    といえば、ちょうどこの雑誌をみなさんがごらんになるころでしょうか。
    そのころには、ぼくも一息ついて、母と二人で、どこかに一泊旅行に出かけているかもしれないな。
    それとも、舞台あいさつで、どこか地方をまわっているかもしれない。
    舞台あいさつだって仕事の一種にちがいありませんが、まだ行ったことのない各地の風物に接するのは、すばらしい喜びです。
    とにかく、目下のぼくは、そんな空想を楽しみながら、毎日スタジオとロケ現場とを、忙しく往復しています。帰宅するなり、ブランデーを一杯キューッとひっかけて、そそくさとベッドにもぐり込む。スケジュールに追われた、機械のような生活。でも、ぼくは、これっぽっちも不平をもらしたりはしないつもりです。なんといっても、仕事あっての役者なんだもの!
    与えられた仕事を、つぎからつぎへとコナして、ときにはモミクチャにされながら、徹底的に自分自身の中に“役者根性”を叩き込むことができたら!
    将来はともかく、現在の若いぼくには、最近のめまぐるしさも、肉体的な苦しさも、みんな自分を鍛えるための貴重な試練のように思えるのです。(こいつは、ちょっとキザだったかな?)
    では、ガラにもなく、もっともらしくゴタクをならべたところで、ひとまず筆をおくことにします。またお目にかかる日まで…。
     チャオ!


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