浜田光夫 研究室

浜田光夫さんファンによる

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岡 ななみ
   

 青い山脈

   
    配給:日活

    公開:1963.1.3

    監督:西河克己

    脚本:井手俊郎、西河克己

    共演:吉永小百合、高橋英樹、田代みどり、芦川いづみ、二谷英明

    浜田光夫さんの役名:金谷六助

    ♥ ストーリー
    古い考えの残る女子高に転校してきた新子(小百合さん)。男の子と仲良くする新子を良く思わないクラスメイト達が偽のラブレターをよこす。島崎先生に相談するも、いつしか町全体巻き込んだ騒動と発展する。
    保守的な古臭い慣習に立ち向かう島崎先生(芦川いづみさん)と、校医・沼田先生(二谷英明さん)の大人の恋模様と六助・新子の学生の恋模様が描かれる。
    原作を読み、1949年版映画も観るとより楽しめると思う。

    ♥ 資料
    当時の近代映画浜田光夫さん特集号の、匿名記者座談会でこの作品の浜田光夫さんのことを評価している部分がありましたので、引用させていただきます。Aさん、Bさん、Cさんが浜田光夫さんについて評論を繰り広げる内容でした。
    ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
    C 「青い山脈」これだな。これは大きかったね。この浜田は、二枚目だけど損な役を、実にハツラツとやってたもの。
    B あの話は三枚目ばっかり活躍しちゃう話なんだよね。あの六助って役は、いいようで、本当は影が薄いんだ。浜田だからこそ、あそこまで見せた、といえるな。
    A このへんが決定打かな。今年になって、一段と人気が伸びてきた感じだものね。
    ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
    匿名だから言いたい放題している座談会ですが、この作品については皆さん高評価なんですね。なるほど。たしかに重要なポジションではあるものの目立った活躍はしていないかも。でもこの役は浜田光夫さん以外考えられない。ハマりすぎ!

    ♥ 個人的に好きなシーン

    六助さんが店番をする商店に卵を売りに来る新子。のんきな感じが良い。新子に「間が抜けてるわね」とか言われちゃうけど、そこが良い。とても良い。
    「君、高校生?」「そうよ。」「何年生?」「3年よ。」
    「君、料理できる??」の詰め寄り(笑)
    両親が不在のためご飯が食べられず困っているという。作ってくれなきゃ卵買ってあげないぞ、と強気(笑)
    「おなかペコペコなんだよぉ~」という六助さん、か!わ!い!す!ぎ!る!
    半ば強引にキッチンに向かわせる。

    「できたわよ!」と声をかける新子。
    「いやぁ、わるいなぁ~」とへらへら居間へ来る六助さん。これ!!!!私の大好きな浜田光夫さん!!口では謝りながら悪びれる様子もなく笑っている。こんなキラキラ笑顔で、いやぁ、ごめんごめんとかズルい。何でも許しちゃうよ!

    一口食べて「どうにか喉を通るね!」(笑)

    卵代20個分200円を請求される(笑)
    20個も一気に使ったのか!!まぁね、六助さん失礼だからこれくらいはしてやらないとね(笑)

    ネズミが出て、キャーッと六助さんにしがみつく、というか押し倒すというかなぎ倒す(笑)このドサッと倒れた時の浜田光夫さんの前髪を見て頂きたい。ファサァッとなっている。芸術・・・。

    このなんてことない出来事が、大問題に発展するんですね~。


    新子が学校帰りオートバイに乗っているとラグビーボールが飛んでくる。
    取りに来たのが、
    「なぁんだ!卵屋さんか!」六助だ。
    大学生の友達ガンちゃん(高橋英樹さん)とラグビーに興じていた。六助さんは浪人生。のんきだな・・・

    「あなたのせいで大変なことになっている」と言う新子と座って話そうということになり、道端に座るんだけど、この時、葉っぱをよけてあげる仕草が好きすぎる。浜田光夫さんの仕草ひとつひとついちいちツボなんですけど!!!!

    この後ガンちゃんがケガして寮に行くんだけど、男子だらけの中にいると浜田光夫さんの可愛らしさが際立つよねぇぇぇ。いつも可愛い小百合さんの横にいると忘れがちだけど。あああ、浜田光夫さんって可愛いよなああああって改めて感動する。


    沼田先生の所で作戦会議した後、新子と二人で帰り道。両親に会わせたいから家に来てくれないかと提案。その前に私の家に来て、今まで見ていない家での私を見て、それで判断してはどうかと新子。なんだかいつのまにやらいい感じじゃないですか~。

    そして改めて新子の家を訪ねる六助さん。ガンちゃんも連れて来ている。
    立場逆だけど、プライベートで英樹さんが一人じゃ恥ずかしいからって、嫌がる 浜田光夫さんや山内賢さんを宝塚に同行させていたエピソードが思い浮かんでくる(笑)こんな感じだったのかな(笑)
    ひげを剃っていたガンちゃんに「締まらないわね」と言う新子。その横でハッハッハッ!と笑う六助さん。ああ可愛い。六助さんほんと可愛いわ。

    その日は新子の家がピンチで、鶏を夜輸送するという日だった。協力するよ、と六助さんとガンちゃん。
    そして夜。追手と乱闘!珍しい!かっこいいアクションシーンというより、普通の平和な学生たちが頑張っているという感じ。平和。


    さて本題はPTA会議にまで発展するも、風変わりな文学青年ガンちゃんやみんなの頑張りでどうにか事は収まり、ラストは5人で山へサイクリング。島崎先生、沼田先生、新子、六助さん、ガンちゃん、和子という面々。
    島崎先生に告白しようとするもなんだかはっきりせず口ごもる沼田先生。いっぽう六助さんは山の上から大声で「俺は新子さんが好きだ―ーーーー!!!!!!!好きだーーーー!!!!!!!」その横で新子も「私は六助さんが好きだーーーーー!!!!好きだーーーー!!!!」嘘でしょwなにこの展開wwwでも嫌いじゃないwww他の人がやったらドン引き興ざめだろうけど、浜田光夫さんと小百合さんだと許せる。魔法。
    そして触発された沼田先生もはっきり島崎先生に告白。返事はOK。おめでとう~!
    「次はガンちゃんの番ね。」と和子に言われ、ガンちゃん「俺は海が好きだ―ーー!!!!!」wwwいやいやガンちゃんいつもいいとこ持っていくわ~。
    めでたしめでたし。

    予告編だと、先生に触発されて六助さんも「よぉ~し!」って好きだと叫ぶ流れなんですね。逆ですね!!


    長期に渡る彦根ロケも、出演者に同年代が多かったこともありとても楽しかったそう。滞在していたホテルではみんなで枕投げして盛り上がったそうですよ。いいなぁ、楽しそう!
    (2016.6更新)



    さて、ここまでは少々ふざけて浜田光夫さんの可愛いところを重点的に紹介致しましたが、石坂洋次郎さんの原作本を読み、1949年の杉葉子さん・池部良さん版の映画も観ることが出来ましたので、比較してみようと思います。(1957年版も観てみたいなぁ。六助さん久保明さんなんだよ!絶対良いよね!)

    映画は基本1作目の井手俊郎さんの脚本がベースとなっていると思われます。
    日活で映画化するにあたり、原作の出版から14年経過し時代的なズレを直すため、井手俊郎さんと西川克己監督とで相談し、新子を主役にし新子の積極的な生き方に重点を置いたそうです。(近代映画 青い山脈特集号での西川監督・芦川いづみさん・二谷英明さん座談会より)

    主な配役
    役名 1949年 映画 1963年 映画
    金谷六助 池部良 浜田光夫
    寺沢新子 杉葉子 吉永小百合
    島崎雪子 原節子 芦川いづみ
    沼田玉雄 龍崎一郎 二谷英明
    ガンちゃん 伊豆肇 高橋英樹
    笹井和子 若山セツ子 田代みどり
    梅太郎(笹井とら) 木暮実千代 南田洋子


    主に日活版のみに見られる特徴
    ・彦根ロケ(原作では弘前。西川監督が城下町が良いだろうと熊本と彦根をロケハンしたうえで彦根に決定した。)
    ・旧制女学校→女子高校
    ・新子がオートバイに乗っている。
    ・ネズミに驚いた新子が思わず六助に抱き着く。それを見られ騒動に発展。(原作でも今井監督版でも、一緒に占いへ行くのを見られ、相性診断だと勘違いされ騒動に発展。)
    ・ガンちゃんラグビー(元はテニス。新子も一緒に興じる。)
    ・新子の家は養鶏場を営んでいる。(原作ではリンゴ農家を祖父の代から引き継いでいる。)
    ・トラック襲撃(原作にはリンゴを闇移送し追われるという展開があるが、今井監督版は無し。)
    ・アマチュア無線で会議を中継
    ・六さん・新子が「好きだ―!」と叫びあう→先生のプロポーズ(今井監督版は逆)
    ・前後編でもなく一本の作品(約1時間半)

    原作から大きく変わっているところは既に一作目から脚色されている点であり、それをさらに日活版に手直しされたという印象。
    日活はそれ以前の二作とは異なり、前後編分けることもなく一本にまとめている為、 描き切れていないところが無きにしも非ずですが、それでも日活青春映画らしさもプラスされていて“日活の青い山脈”として完璧ではないでしょうか。

    ※ 以下原作の結末を含むネタバレ有り
    映画のラスト、みんなでサイクリングへ行く代名詞とも言えるシーンは、映画オリジナルでした。原作では沼田先生と島崎先生二人きりでプロポーズ。それを聞いていた和子が六さんたちに教え、みな胸を熱くしハッピーエンド。
    六さんと新子の関係はあくまでもお友達で、従来の男女の関係とは異なる、爽やかで清々しい関係(恋のフラグはたてられている。)。男女だからってすぐに恋に結び付けたり、下世話な心配をするのはナンセンスですものね。
    原作では会議のあと夏休みに入り、それぞれを田舎で過ごし近況を伝え合うお手紙を綴り各々の出来事が描かれるのですが、そのお手紙形式が素敵でした。


    近代映画臨時増刊号を読んでおりますと、戦後間もなく流行した作品をやるのは時代錯誤ではないかと心配されていたようです。当時どのように受け取られたのか肌で感じることが出来ないのが歯がゆいですが、1963年の作品としてアップデートされているのではないかと2019年の私は感じます。
    その近代映画臨時増刊号の南部僑一郎氏の三作品の考察が非常に勉強になりますので、皆さん読んでいただきたい。いつか文字に起こしたい。

    青い山脈は、古い考えからの脱却、女性の解放、お国の為・学校の為に個を犠牲にしない、等のテーマが盛り込まれ、新しい時代への希望が感じられるのですが、いかがでしょうか。令和になった今も、完全に過去の問題と言い切れないことが悲しいです。卑しい好奇心を満たすために他人の尊厳を踏みにじる。現在も続いている問題です。

    日活版では高橋英樹さんが演じておられます、一風変わったバンカラ学生・ガンちゃんのセリフに真理が込められているように思えました。教育勅語にまで言及しているのは日活版のみ。
    原作の梅太郎、島崎先生が訴える女性の地位向上についても思わず大きく頷いてしまいました。男だから女だからとイメージを押し付けるのではなく、お互いに個人を尊敬しあう事。

    日本人に根深く残る問題点を爽やかな青春映画にして提示する、これを観て何をどう感じたか議論したくなる、今も昔もこれからも多くの人々に観てほしい作品のひとつです。
    (2019.6 更新)

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