浜田光夫 研究室

浜田光夫さんファンによる

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管理人
岡 ななみ
   

 キューポラのある街

   
    配給:日活

    公開:1962.4.8

    監督:浦山桐郎

    脚本:今村昌平、浦山桐郎

    原作:早船ちよ

    共演:吉永小百合、市川好郎、東野英治郎、杉山徳子、加藤武

    浜田光夫さんの役名:塚本克巳

    ♥ ストーリー
    言わずと知れた不朽の名作。
    貧しい中でも希望を持って生きる中学3年生・ジュン、弟・タカユキを中心に、貧困、差別、様々な問題を取り上げた社会派青春映画。

    浜田光夫さんは小百合さん宅のお隣に住む鋳物工員。今年20歳になる。中学卒業後、鋳物工場にて働いている。解雇されてしまうジュンの父と同じ工場に勤めており、何かと力になろうと頑張ってくれます。


    ♥ 好きなシーン
    ※ 名シーンばかりで本当は全編通して書き起こしたいところですが、あくまでも浜田光夫さんのシーンのみです。

    鋳物工場が建ち並ぶ、埼玉県川口市。

    クレジットバックに工場のシーン。浜田光夫さんが大変だったとおっしゃっていたシーンかな。尋常じゃないほど高温の金属を慣れた手つき・足取りで運ばなくてはいけなくて、監督が納得するまで何度もやり直しをしたそうです。

    工場の買収に伴いジュンの父・辰五郎(東野英治郎さん)を含めた3人がクビになる。
    「マルサンにこの工場売るのはあんたがしくじったせいじゃないか。それを職工の首切って尻拭いしようなんて義理人情の筋だって通らねえじゃねえか!」
    克巳くん(浜田光夫さん)は工場長に直接訴えますが、怪我をした辰五郎を雇っていたことを有難く思え、と工場長。
    「たっつぁんが怪我したのはボロクレーンを修理せず使ってたからじゃねえか!ちょっと景気が良くなりゃうち直したり二号囲ったり車買ったりしてよぉ」
    「かつ!!」と、辰五郎さんに止められる克巳くん。逆に工場長を庇う辰五郎。
    そこへジュンの弟・タカユキ(市川好郎さん)が母の陣痛が始まったと、父・辰五郎を呼びに来ます。

    公園でタカユキ、テツハルが遊んでいるところに通りかかる克巳くん。
    「こら!坊主、何やってんだい。」

    「かっちゃん、どうなったの?あれから。」と聞くタカユキ。
    「お前んとこの父ちゃんのお陰でめちゃくちゃだよ。どうした親父は?病院行ったのか?」
    タカユキ「途中でどっかへ飲みに行っちゃったんだよ。」
    「しょうがねえなあ!お前ら病院持ってくんだろ?その布団。」
    タカユキ「うん。」
    「何やってんだよ全く。遊んでるときじゃねえよ。ほら、来い!」
    と、自分も布団を持って病院へ。克巳くん優しい。頼りになる。



    病院着。赤ちゃんの泣き声。飛び出してくるジュン。
    「どうした?ジュン!生まれたか?」

    ワッと克巳くんに泣きつくジュン。


    ☆+°.

    タカユキが家出し、頑固で頭でっかちな父に意見するジュン、それを止める母。

    「やあ!おやじさん、ちょっと話があるんだよ。」
    克巳くんだ。何やら封筒を差し出し
    「こいつね、みんなの志なんだよ。まあ、餞別みたいなもんだけど、とっといてくれ。」
    「すまねえ。」と珍しく素直な辰五郎さん。
    「それからね、俺、マルサンの組合の委員長と話したら、おじさんの二年前の怪我ね、当然工場だし設備不十分の疑いがあれば組合で問題にしてくれるっていうんだ。それに退職金のこともね、法律的に予告手当を最低ひと月分出さなきゃいけねえんだ。それでよ、とにかくいろいろ事情聴きたいから明日にでもその委員長の家に来てくれねえかっていうんだ。」
    「せっかくだが…お前の好意はありがてぇ。でも組合ってのが気に入らねえ。俺は根っからの職人だ。アカの世話になっちゃ世間に笑われる。」とかなんとか言い始める辰五郎さん。
    「何言ってんだよ。組合がアカだなんて、それこそもの笑いだぜ。当たり前のことを要求するだけじゃねえか。第一、これは法律で決められていることなんだぜ?」
    タカ探してくる、とか言い出て行く辰五郎さん。

    ☆+°.

    友達のヨシエちゃんとパチンコ屋でアルバイトをするジュン。店内で小林旭さんのダンチョネ節が流れている…!

    画面右…克巳くん来てますよ…。
    当時、玉補充するの手動だったのですね。
    「63番!おい!玉出ねえぞ!」克巳くんの声ですね。
    上から顔を出すジュン。

    あ!


    帰り道、二人で話しながら歩いている。

    「最初の日から見つかっちゃったわ。でも内緒よ?」と言うジュン。あはははははは!と笑っている克巳くん。この映画、克巳くんだけが癒しポイント…心の拠り所…。
    土手に座り、「アルバイトっていくらになるんだよ。」と聞く克巳くんに、「だいたい3000円くらい。だから12月までやって9000円でしょう?それで入学の時の費用払えるもの。」と答えるジュン。
    「ふーん。偉いなぁ、ジュンは。しかし続くかい、身体は。」
    「へっちゃらよ!エイッ!(石を投げる)ソフトの選手だもん。」
    「ははは!頑張れよ。」
    「私さ、勉強しなくても高校行ける家の子に負けたくないんだ。」
    「そうだな。俺もよ、高校行けなくてグレちゃったことあったけど、この頃組合に首つっこんでるとわかんないことだらけさ。やっぱり無理言っても高校行っときゃよかったなーと思うよ。」

    このシーン。この克巳くんの「偉いなぁ、ジュンは。」で、毎回泣かされます。優しく話を聞いてくれて温かい言葉を掛けてくれる、そんな存在がいること。克巳くんも気持ちがわかるからこそ石黒家の為に尽力してくれるんですね。

    ☆+°.

    ジュンの後をつけパチンコ店に入るか躊躇する担任の野田先生(通称スーパーマン)。この先生も良い先生なんだ。
    大声で「スーパーマン!!!先生!!!何やってんだい!!!」と声を掛けられる。
    自転車にまたがる克巳くん。驚く先生を見て「はははははは!」と笑っている。可愛い。ほんと唯一の清涼剤。

    「塚本か。びっくりするじゃないか。」
    「先生もつらいね。パチンコしようったって勤務評定がうるさいもんな。」
    「バカ言え、仕事中だ。うちの生徒がこの中にいるんだ。」
    「先生、ジュンかい?」
    「なんだ知ってんのか。お前隣だったな。」
    「そのことでよ、ちょっと話があるんだ。」
    なになに、また克巳くん助けてくれるの。なんていい子なんだ。自分だって大変なこともあるだろうに。まだ若干19歳なのに。優しすぎる。

    夜。
    ジュンが庭先で洗い物をしていると、酔っ払った克巳くんが「日本の青年よ、がんばれ~!!」などと騒ぎながら歩いてきます。かわいいですね。浜田光夫さんよく酔っ払うシーンあるけど、いつも本当にかわいい。たまらん。
    ジュンを見つけ「ジュン!はっはっは。良い奴だな、お前は。」絡んできます(笑)
    「どこで飲んでたの?」と聞かれ「スーパーマンとね。お前を褒めてたぞ。」
    蛇口から直接水を飲む克巳くん。これもアイアンキングが頭に浮かんできてにやにやしてしまう(笑)。
    「ジェーネレーションってなんだよ。」
    「ジェネレーションでしょう?時代とか世代とか。」
    「それそれ!若きジェネレーションってのはすると俺とお前ってわけか。」

    水を汲みに来た克巳くんのお婆ちゃん(北林谷栄さん)に「克巳!娘さんに変なこと言うんじゃないよ!」とたしなめられ
    「黙ってんだよ、オールドジェネレーションはよぉ。」と反論(笑)
    「近頃の若い者はデレデレしおって」と酔った辰五郎さん登場。
    「なんだよ、たっつぁん。」
    同じ酔っ払いでもこっちはかわいくないーー(笑)
    ジュンの同級生の父の計らいで埼玉重造に再就職が決まるも、オート化された機械を受け入れられずすぐ辞めてしまう辰五郎。修学旅行も進学も全てこの父が働けば解決する気がするんだけど…

    ☆+°.

    修学旅行に行かず、ちょっと不良の同級生リスちゃんとバーに行くジュン。
    無人の石黒家に電報が届く。
    ひょこっと顔を出すお隣の克巳くん。と、預かっている石黒家次男のテツハル。


    代わりに電報を預かる。

    スーパーマンからだ。旅行をやめたわけを知らせろ、という内容。ジュンが修学旅行へ行っていない…

    その頃ジュンはリスちゃんの不良兄貴の仲間の不良少年たちに睡眠薬を飲まされバーの裏に連れ込まれ絶体絶命。
    克巳くんが警察を連れバーに入って来る。

    ジュンの鞄と、眠っているリスちゃん。
    リスちゃんを揺り起こし「ジュンはどこ行ったんだよ!」と詰め寄る。
    バーテンに聞き裏へ突入するが先にリスちゃんが教えに来て、不良を逃がし、リスちゃんがジュンも連れて逃げる。
    途中、ジュンは足を怪我してしまう。リスちゃんは「兄貴呼んでくるから待ってて」とか言って走って行く。意味が解らない。
    克巳くんがジュンを探す声が聞こえる。
    「ジューーーーーーーーーーーーーン!」

    せつない。ここで出て行かないジュンの気持ち、わかる気がするな。いや、私だったらかっちゃん!っつって出て行って慰めてもらうかなうへへへへ…スミマセン黙ります。

    克巳くんが来てくれなかったらと考えると恐ろしい。克巳くんこそスーパーマン♡


    ☆+°.

    ジュンが職場見学から帰宅すると、とても楽しそうにちゃぶ台を囲んでいる父、母、克巳くんが。
    克巳くんの工場が新工場を建てるにあたり人手が足りないので、辰五郎さんを元いた工場で雇ってくれることになったそうな。克巳くんの計らいで。
    「克巳様様だ」と言う辰五郎さんに、
    「たっつぁん、俺じゃねえったら。組合がやってくれたんだよ。みんな集まってよ。そこんとこだけは大事なとこだからよ。」
    「ありがてえもんよ…」
    「そうさ!たっつぁんも、復職すればそこの組合員だ。勤続労働者ってわけさ。」
    「俺はやっぱり職人だからよ…」そこだけは譲れない辰五郎。
    「それだからいけねえんだよ、たっつぁんは。」(克巳)
    「だめよ、かっちゃん。お父さんいくら言ったって根本的に古いんだもん。」(ジュン)
    「親を子馬鹿にするんじゃねえ。お前だって県立第一にいくんだ。金持ちの子になんか負けるなよ。」(父)
    「またそんなこと言って」(母)
    「それくらい張り切ってもらわなくちゃ!まだ若いんだもん!」(克巳)
    「だけど父ちゃん、私県立第一行かない。働きながら定時制に行く。」と言い出すジュンに驚く一同。「父ちゃんの身体は無理が利かないし、父ちゃんに頼らない生活を立てる」と言うのだ。
    それを聞き克巳くん、「うん。しかしな、これからの父ちゃんは違うぜ。俺達も仲間でよ、前みたいにすぐクビになったりしないからよ、ジュンも安心して昼間行ったらどうだ。そりゃ、うちの為に働くってことは立派だけど、夜間じゃ実際のところ勉強するったって…」
    この、うんって一度受け入れてくれるところ、立派だと意見を認めてくれるところに克巳くんの優しさを感じずにはいられない。しかしジュンの意思は固い。
    「これはうちの為っていうより自分の為なの。たとえ勉強時間は少なくても働くことが勉強になるのよ。その日暮らしじゃなくて計画を立てて生活したいの。」

    「そうか………参ったよ、こいつは!はははは!俺の負けだ!
    おばさん、偉いや、ジュンは。」
    「そうかねぇ…」(母)
    「しかし、よくそういうことわかったもんだなァ、よっぽど考えたんだな!」
    周りの人たちが教えてくれたんだ、とジュン。

    この克巳くんのちゃんと相手のこと考えてくれて、良いことは褒めてくれるところ、本当に優しい。

    ☆+°.

    「行ってきます!」
    克巳くんと辰五郎さんは一緒に出勤。良かったね、働くことができて。

    ジュンは面接の日。その前に朝鮮へ帰る三ちゃんをタカユキと見送ります。そして駅まで走る二人―――。
    「終」




    浜田光夫さん出演シーン全て紹介してしまいました。
    克巳くん優しい。何でも親身になってくれる相談相手で、心配してくれて、認めてくれて、わからないこと教えてくれて、頼りになる優しい隣のお兄ちゃん…最高かよ!
    克巳くんこそ正義のヒーローだよ。

    どうしても 問題を抱えているジュンやタカユキ、三ちゃん、ヨシエちゃん、父に目が行きがちかと思いますが、克巳くん無しではこの作品は成り立たない。超重要人物。浜田光夫さんの良さも存分に発揮されている。それが認められ、浦山監督の「非行少女」に繋がっていくんですね。

    本年2016年にこの作品で浜田光夫さんが賞を受賞されたことも頷けますよね!!!!素晴らしい!!!!

    ここではあくまでも浜田光夫さんのシーンだけを取り上げましたが、 タカユキと三ちゃんのシーン、ヨシエちゃん、牛乳配達の少年等、素敵な登場人物、胸を打つシーンがたくさんあるので、全て通して観ていただきたいです。
    学ぶことがたくさんありました。

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