浜田光夫 研究室

浜田光夫さんファンによる

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管理人
岡 ななみ
   

 サムライの子

   
    配給:日活

    公開:1963.2.24

    監督:若杉光夫

    脚本:今村昌平

    原作:山中恒

    共演:田中鈴子、小沢昭一、南田洋子、松尾嘉代、田代みどり

    浜田光夫さんの役名:マキタ

    ♥プレスシート


    ♥ ストーリー
    小学生・ユミ(田中鈴子さん)は紋別から小樽へと引っ越す。長年離れて暮らしていた父親(小沢昭一さん)から市営住宅に入るからと聞かされていたが、現実はボロボロの長屋で、ゴミを拾って生活をしている通称“サムライ部落”と呼ばれる集落だった。
    酒飲みの父、継母(南田洋子さん)と弟との生活が始まる。学校で意地悪な男の子にいじめられるが、持ち前の気の強さや同じサムライ部落のお兄さん・マキタ(浜田光夫さん)、高校生の恵子(田代みどりさん)らに励ましもあり負けずに生きていく。
    ある日、市の方針で“ノブシ”と呼ばれる無法集団が近所に送り込まれる。当たり屋や窃盗犯などの集まりでサムライ部落の人々とは対立をしている。ユミは同年代のノブシの女の子・ミヨシと口を利くようになる。
    父が競輪で10万儲けたと嬉々として帰って来る。リヤカーを買い、部落ともおさらばだ、とその晩は部落の人々を招いて飲めや歌えや大盛り上がり。
    朝目覚めるとリヤカーは盗まれ、残金は2万円に…。それを奥さんやユミのせいにする父。ユミは家出をし、学校も行かずミヨシや母と共に橋の下で生活を始める。そんな生活がしばらく続いたが、ある日橋の下へマキタらが訪ねてくる。「お父さんはあれから酒も一滴も飲まず改心している。結婚資金を貸してリヤカーを買ったんだ。これからは俺たちも見張っているから、もう大丈夫。帰っておいで。」
    サムライの子であることを恥じず、堂々と生きていこうと前を向くユミ。ミヨシは遠縁の叔母さんに引き取られていく。ユミ、母はすっかり改心した父と笑顔でリヤカーを引いている。


    ♥ 好きなシーン
    ※ストーリーの流れ関係なく浜田光夫さんの出演シーンのみです。一度観た記憶を元にしているため不十分な箇所や私の思い込みな部分があるかと思われます。

    部落にユミを連れてくる田島さん(小沢昭一さん)。飛び出してきた青年・マキタ。浜田光夫さんだ。会うなり田島さんの脱いだ服を着ていくマキタ。「今夜彼女と映画なんだ!」
    ユミを紹介されると、ニコニコしながら「5~6年したらミス小樽だべさ!」
    北海道弁がかわいい。北海道出身の私感動。~だべさ!言ったことないけど。


    ♪わかっちゃいるけど やめられない♪
    ユミが目覚めると家族は誰もいない。外に出ると「スーダラ節」を歌いながら洗濯をしているマキタさん。
    「ユミっぺ、ごはん食べたか?」勝手にユミっぺって呼んでる(笑)
    食べてないけど用意してある、と言うユミっぺを、一緒に食べようと誘う。
    食事をしながら何も知らないユミっぺに、ここの人間の生活の仕方を教えてくれる。(観客にも教えてくれてるんだね。)
    朝早くからゴミを集めるため街に出ていること。マキタさんは港で荷揚げ人足(月収1万5千円)をしている。ユミっぺより小さいころから1人で暮らしている。目下恋人と暮らすための家を改造中。(少し先の廃墟の方を指し教えてくれる。)「スイートルームだ。よかべ?」
    「これから毎日朝飯食うべし!」と言い出すマキタ!!!浜田光夫の食べてる動作が大好きな私、歓喜(笑)!なんかネバネバしたおかずとご飯を食べていた。やはりかわいい浜やんの食べ姿。
    それから、学校にはここにいるということは言わない方がいいと忠告。「じゃ!」と言って仕事に向かう。「家の鍵閉めて来たか?ここも出る時閉めて行ってくれよ!」

    ☆~

    スイートルームにリフォーム中のマキタ。またいい調子で♪わかっちゃいるけどやめられない♪と「スーダラ節」を歌いながらベニヤ板を貼り付けている。
    彼女のヒロ子ちゃんに、ベニヤ板3500円だった、これ貼ればピンクムード出るべ、と楽しそうに話している。『はんかくさい!』とつっこまれている(笑)バカじゃないの!のような意味らしいよ。
    そこへ、学校から下校してきたユミっぺが。「家さ帰らない方がええぞ。」と教えてくれる。お父さんたちが喧嘩中のようだ。
    ユミっぺはまっすぐ帰ると同級生の悪ガキたちに意地悪される為、一旦医者の娘・恵子(田代みどりさん)のお家に寄ってから帰っている。お風呂に入れてくれるからいい匂いがするのか、マキタはユミっぺの匂いを嗅ぎ「いい匂いだ。香水だな。」とニコニコ。変態みたいだけど浜田光夫さんだとかわいいという不思議。
    ヒロ子は『ここに住んでいること、あんたが隠せって言ったの?何も隠すことないじゃない。』とマキタに問う。「白い目で見られるだけだ。なにも自分からいじける必要はないべ。そったら甘いもんじゃねえ。」というようなことを言うマキタ。話し合っている二人に『私、言わない!』と言い走り去るユミっぺ。

    ☆~

    サムライのみんなが恐れていたことが起こる。市の方針で、ノブシと呼ばれる者たちが送り込まれてきたのだ。
    先頭を切って反対の意を叫ぶマキタ。あの改造中の建物が、ノブシの住処にされてしまう…!「俺のベニヤがあるんだ!そんな勝手なこと許されるか!家賃払わねえぞ!」もちろん聞く耳なんか持ってくれません…。


    「今の日本の状態が狂ってるんだ!」
    マキタとユミっぺが朝ごはんを食べていると、窓の外からノブシの子供たちが覗いている。
    「見んな!知らん顔してれ!仕事さ行くからな。あいつらには構わないでいるんだぞ。」とお弁当を包みながらユミっぺに注意をするマキタ。親より頼りになるよね、マキタさんって。
    ユミっぺ!ユミっぺ!と追いかけられて結局友達になるんだけどね。特に同年代の女の子・ミヨシと仲良くなります。


    ☆~

    マキタさん家にヒロ子さん。あの改造していた家には当たり屋の熊みたいな男が住んでいる。ベニヤとペンキで3500円の損害だ!と怒っているマキタ。その熊さんはミヨシのお父さんです。
    『しゅんちゃん、私、ここでもいいのよ。』と優しいヒロ子さん。マキタさん、下の名前出てこないけど、しゅんちゃんというのね。
    「紙貼ればムード出るべか。」と明るく話すマキタさん。そうよ、マキタさんとならお部屋なんて何だっていいのよね。どこだってスイートルームよ♡(←これは私の感想です(笑))

    外で騒動が。例の熊さんが何やら責められている。殴りかかるマキタさん。「これはベニヤの分だ!」とかなり根に持ってるご様子。しゅんちゃん!、ええ加減にすねえか!と止められる。

    ☆~

    港で結婚のことを話す、マキタさんとヒロ子さん。
    ヒロ子さんの職場では、結婚すると辞めさせられるという。工場としても、熟練工はいらん、と結婚を理由に辞めさせられるのだそう。その為、隠れて結婚をしている人が多いのだそうだ。
    「他人事じゃねえな!みんなの問題にしないといけないな。」とマキタさん。
    『当分我慢してくれる?』「仕方ねえ、我慢しよう!」
    二人はバスに乗る。ユミっぺを見つける。「ユミっぺ、どこさ行ってきた?」と話しかけながらまたいい匂いを嗅いでる(笑)
    バスが急停車し、車掌たちが慌てている。身を乗り出し「どうしたんだ!?」
    当たり屋の熊さんが、車に当たったところバスの下敷きになって死んでしまう……

    お葬式を済ませ、田島一家、ミヨシ、マキタ、ヒロ子は家路につく。お骨を持つミヨシが『ぶら下げてもいいか?』と言うと、持ってくれるマキタさん。優しい。ヒロ子さんが『しゅんちゃん持ってあげてよ』と言った気もするけど。でも「何も俺たちの乗ってるバスに轢かれなくても!こんなやつはほっとけ様だよ!」と文句を垂れ流してます(笑)

    田島さん宅で、これからミヨシをどうするか相談し合う。施設に入れるしかないということに落ち着くが、当の本人は頑なに拒む。ユミっぺと学校に行きたいのだ。困った。

    ☆~

    ある日、競輪で10万儲けてリヤカーを買い、ここを出て商売するぞ!と意気揚々と帰って来るお父さん。
    その晩、近所の人たちを招き高級なお酒を沢山空け、お祭りさわぎ。マキタさんは夜勤で家にいないし、寝られないからもうやめて、と止めるユミっぺもお構いなしに騒ぎ続ける大人たち。マキタさんがいたら止めてくれるだろうに…。
    翌朝、夫婦が目覚めると、リヤカーは盗まれ、現金も2万円しか残っておらず…。それすらも奥さんやユミっぺのせいにするお父さん。使えばなくなるの当たり前でしょ!と子供に言われる始末。耐えかねたユミっぺは家を飛び出す。
    ミヨシらと共に、学校も行かず橋の下で生活を始める。追って母も橋の下での生活に加わる。そんな日々が続いたある日の朝、マキタさんとヒロ子さんがお父さんを連れて訪ねてくる。「父ちゃんはあれ以来酒も一滴も飲まずに真面目になったから、ユミっぺ帰っておいでよ!リヤカーを買ったんだよ!俺たちの結婚資金で貯めていた1万5000円を貸したんだよ!ほら!見てみれ!ハハハハ!」めちゃくちゃ」明るく報告してくれるけど、他人のクズ親父のために貯金使ってくれるなんて信じられないくらい優しいんですけど…
    「ミヨシの遠縁の叔母さんから連絡があって、引き取りたいと言ってるよ!」ということも教えてくれる。
    帰っておいで、一緒に働こう、と言うお母さんの横で「勘定も合わないしな!ハハハハ!」大人たちはみんな楽しそうに笑っている。勘定が合わないというのは、母は学校に行っていなかったので屑拾いの精算の際に計算が出来ず、ユミッペに暗算を手伝ってもらっていたことから。

    程無くしてミヨシは嫌がりながらも旭川の叔母さんの元へ。


    朝から親子でリヤカーを引き仕事をする田島さん一家。
    マキタが声をかけます。「おはよ!!!今日は日曜か!今日は朝飯いっしょに食えないな!!」
    ねえ、なんてかわいいの。この作品の一番の清涼剤だよね。



    以上ですね。
    浜田光夫さんは、40日間にわたる小樽オールロケ参加のため、日大の入学式には参加できなかったそうです。
    そうなると、1963年2月の公開はおかしいぞ?となりますよね。手持ちの日活映画(雑誌)にちょうど公開情報が載っておりました。1962年6月号で新映画情報として紹介されているので、撮影は1962年4月頃で間違いなさそうなのですが、どうやらすぐには公開されなかったようで、1963年3月号で再度新映画として紹介されております。公開まで10カ月ほど温めておいたのでしょうね。
    1962年は「キューポラのある街」に次ぐ名作!という打ち出しで、
    1963年は、中央児童福祉審議会推薦、青少年映画審議会推薦、日本PTA全国協議会特選、日本ジャーナリスト会議推薦、全国勤労者文化協会特選、機関誌映画クラブ特選、優秀映画鑑賞会推薦、主婦連合会推薦 他、と、推薦団体がこれ見よがしに羅列されている。
    こういうお墨付きを集めてから公開したのかなぁ~

    ―――――――――――――――――――――――――
    謎か解ける記述を発見しました。
    1963年 近代映画 増刊号 浜田光夫 写真全集より抜粋(文・南部喬一郎氏)
    「この映画は、物語の暗澹さのために、永いあいだ陽の目をみなかった。今度ようやく公開されることになったが、欠点はあるにしてもいい作品だ。とくに、浜田にとっても、これは朗報だし、浜田ファンたちにもぜひ見てもらいたい映画である。」
    との事です。なるほど。やはり撮影してすぐには公開に至らなかったのか。
    ―――――――――――――――――――――――――

    この手の作品は暗く重くなりがちだけど、主人公のユミをはじめ、登場人物たちが腐らずイキイキと生活をしていて、終わった時には観て良かった、と思える作品でした。どうやら原作とは変わっている点も多いみたいなので、原作本も読んでみたいところです。

    自分自身楽な状況ではないはずなのに、主人公を助け、明るく励ましてくれる。浜田光夫さんのお得意分野ですね。というか、そういう浜田光夫さんが必要なのよね。その存在に救われます。

    プレスシートにも載っていますが、首に巻いている 手ぬぐい?がかわいいんだよね。スカーフみたいでさ。
    プレスシートの写真で思い出したけど、ポスターもこの浜田光夫さんと田代みどりさんが大きく使われているんだけれども、物語の中で浜田光夫さんと田代みどりさんは一度も会いもしないし、どちらも主役ではない。人気を利用しているな…というあるあるパターン。

    平成の現在では部落も差別も全くピンと来ないけど(それはすごく良いこと!このような世の中に整えて下さった世代の方々に感謝します!)、どのような状況でも負けないで誇りを持って生きるその気持ちが大切なのだということ、職業や住む場所、環境で人を区別しないこと等は、いつの時代でも共通して大切にすべきポイントなのではないかと思いました。

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